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はじめに
がんは人類を悩ます共通かつ最強の敵とも言うべき疾患であり,わが国でも疾病対策上の最重要課題として対策が進められてきた.1983年,政府は「対がん10ヵ年総合戦略」を策定,その後もがん制圧のための官学一体となった取り組みが進められている.早期診断,早期治療など医療技術の進歩もあり,がんの死亡率は年々減少傾向にある.現在,男性のがん全体の5年生存率は6割,女性のそれでは7割にも達しており,がんは“不治の病”から“がんと共存する時代”になってきていると言える1,2).その一方で,治療が奏効せず,再発から死に至るケースも少なくない.わが国におけるがんによる年間死亡者数は約30万人,人口の高齢化とともに今後も増え続けることが予測される.しかしながら,これまで,がんそのもの,あるいは治療過程において受けた身体的・心理的なダメージには,積極的な対応がされることはほとんどなかった.医療従事者にしても,患者にしても,がんになったのだから仕方がないといった諦めの気持ちが強かったように思う.緩和ケアが英国で行われ始めた背景には,当時がん治療を専門に行う医師の多くががんそのものの治療に専念し,その治癒をゴールとし,がんおよびそれから派生するさまざまな症状に苦しんでいる患者に十分耳を傾けなかった現実があった3).
英国では1987年に緩和医療が専門科として認定され,卒前・卒後の医学教育において教えられるようになった.わが国では,1990年に「緩和ケア病棟入院料」が新設され,国としてホスピスや緩和ケア病棟を経済的に援助して充実を図ろうとしている.また,1996年に日本緩和医療学会が設立され,緩和医療の学際的かつ学術的な面からの発展が期待されている.このように,わが国においても,がん治療をとりまく医療や社会的情勢は大きく変わりつつある.
本講座では開院から約1年経過した静岡県立静岡がんセンター(Shizuoka Cancer Center Hospital;SCC)におけるリハビリテーション科の活動を中心に,がんのリハビリテーションについてシリーズで解説してきたが,今回はその最終回として,緩和ケア病棟におけるリハビリテーションの役割について,緩和ケア病棟スタッフへのアンケート調査の結果も交えて述べる.
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