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はじめに
平成28(2016)年厚生労働省国民生活基礎調査の概況1)をみると,要介護となった原因は1位認知症(18.0%),2位脳血管障害(16.6%)であるが,高齢による衰弱(13.3%)が3位,骨折・転倒が4位(12.1%),関節疾患が5位(10.2%)となり,骨と関節という運動器の疾患があわせて全体の約1/4を占めており,介護予防のためには運動器疾患の予防は喫緊の課題である.そこで,日本整形外科学会は,移動機能の低下をきたし,進行すると介護が必要になるリスクが高い状態をロコモティブシンドローム(ロコモ)と定義し,要介護予防の立場から疾患横断的に運動器障害をとらえ,その予防対策に乗り出している2).
一方,介護が必要になる原因の3位である高齢による衰弱の前段階として,フレイルという概念が日本老年医学会から発表された3).これによると,フレイルとは筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的問題のみならず,認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題,独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念である.この定義によると,筋力の低下はフレイルの身体的要素の主体をなす病態である.近年,筋力の低下について,加齢性筋量減少症(サルコペニア)が注目されている.サルコペニアは筋肉量の低下を主体とし,握力や歩行速度の低下など機能的低下をも含む概念4, 5)である.また,サルコペニアは筋肉という運動器の疾患であることから,ロコモの原因疾患であるともいえる.
このようにロコモとフレイルとサルコペニアはまったく別々の立場から生まれてきた疾患概念であるが,完全に独立した疾病概念ではなく,お互いに深く関連し合っている.しかしながら,フレイルとサルコペニアとロコモの関連について検討した報告はまだ認められない.
われわれは,介護予防と高齢者のQOLの維持増進を目的とし,主として運動器疾患をターゲットとして2005年から大規模住民コホートResearch on Osteoarthritis / osteoporosis Against Disability(ROAD)スタディを開始し,すでに10年目の追跡調査を終了した.今回,第3回ROADスタディ(2012〜2013年実施)のデータを用いて,要介護原因疾患の上位を占めるロコモとフレイル,サルコペニアの相互関係について報告する.
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