人工膝関節置換術後の良好な可動域獲得によりノイズ発生を生じやすいが膝不安定感がなければ患者満足度への影響は少ない

Noise generation with good range of motion but without femorotibial instability has small effect on patient satisfaction after total knee arthroplasty

【要　旨】

　目　的：人工膝関節置換術（TKA）後に発生する関節内ノイズが術後患者満足度を低下させると仮説を立て検討を行った．

　対象および方法：後十字靱帯切離型TKA施行後1年以上経過した61膝を対象とし，8項目の術後ノイズに関するオリジナル質問表の回答を基に，術後膝関節屈曲角度，関節不安定性，2011 Knee Society Score（2011 KSS）との関連を調査した．

　結　果：半数の患者が階段昇降時など膝関節中間可動域でノイズを自覚していたが，ノイズ発生と関節不安定感との関連はなかった．術後膝屈曲角度は，ノイズなし群平均106°と比較してノイズあり群は平均123°と有意に良好であり，patellar tilt angleもノイズなし群平均3.3°に対し，ノイズあり群7.4°と膝関節伸展機構に弛緩性を有していた．しかし，ノイズは大腿脛骨関節内外側靱帯弛緩性とは関連せず，術後2011 KSSには影響しなかった．

　結　論：本研究の仮説は棄却され，TKA術後良好な機能回復による患者満足度の向上がノイズの影響を上回るものと考えられた．