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咀嚼の神経機構
咀嚼や嚥下は運動機能に属するが,運動は大別すると無意識のうちに実行される‘反射’,リズムを持ち特に意識しなくとも実行可能な‘半自動運動’,目的を達成するために意識して行う‘随意運動’(目的指向性運動)とに分類される.随意運動の発現には動機が必要であり,動機をもとにその目的を達成するための運動パターンを企画する.この過程では大脳皮質連合野,運動野,基底核,小脳,視床が重要な役割を持つ(運動の企画).企画された運動プログラムは大脳皮質運動野から小脳・脳幹・脊髄の神経回路に伝達され実行される(運動の実行).運動の実行にあたり筋・皮膚・関節に存在する体性感覚,味覚,嗅覚,前庭感覚,聴覚,視覚情報が実行結果をモニタするのに使われる.
ヒトは上手に手を使い細かな動作ができる.この動作は大脳皮質が大きく関与し,随意的な動作としては高度であるが,この手の動きだけでは意味のある行動とはいえない.摂食行動の場合,栄養の不足をもとに生じた空腹感が視床下部で受容されこれを誘発する.栄養不足を認知し,(時には危険を伴うが)食物を探査し,これを安全に口にするまでの行動の中では器用な手の動きは重要な意味を持ってくる.これに続く咀嚼運動は半自動運動の典型的なものである.この他,半自動運動には歩行運動・呼吸運動などが知られており,いずれの運動も開始・停止が自由にコントロールできる一方,運動自体はリズムをもった周期運動である.しかも,そのリズム運動は空間的・時間的に異なった発火パターンをもった多くの筋が協調することで遂行され,おのおのの筋は運動負荷が変化するに伴いその発火パターンを刻一刻変化させることで環境変化に対応している.
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