特集 誤嚥性肺炎とリハビリテーション
第1章 誤嚥性肺炎の予防
Column 咀嚼は嚥下を難しくするか
井上 誠
1
1新潟大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野
pp.646-649
発行日 2024年6月25日
Published Date 2024/6/25
DOI https://doi.org/10.32118/cr033070646
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「咀嚼は嚥下を難しくするか」というテーマについて考える.臨床の現場では,誤嚥のリスクが高い嚥下障害患者に提供される食品として「軟らかい」「なめらか」「一様」といった物性の食品が一般的に安全とされており,「とろみ」と併せて食形態が決定されている.実際,このコンセプトに基づいて日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021,嚥下食ピラミッド,えん下困難者用食品許可基準,ユニバーサルデザインフード(UDF),スマイルケア食等において食形態の条件が提示されている(図1).一方で食形態を考えるうえでは「嚥下障害」と「摂食嚥下障害」の違いを考慮する必要がある.主に嚥下咽頭期を評価してその障害を定義する「嚥下障害」とは異なり,食品の認知,口腔内への取り込み,咀嚼等の食塊形成,嚥下のいずれかが障害されることを「摂食嚥下障害」といい,「嚥下障害」は「摂食嚥下障害」の一病態ととらえることができる.30年以上前,米国が先行していた摂食嚥下リハビリテーションの臨床においては,主たる障害は「嚥下障害」であり,その原因疾患である脳血管疾患,神経筋疾患,頭頸部腫瘍では咀嚼困難も認められることから,上記の食形態の妥当性に関する議論についてはあまり疑問がなかった.
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