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はじめに
国民の歯の健康づくりを推進していく一環として,80歳で20本以上の歯を保とうという8020運動が提言され,四半世紀を迎えようとしている.平成23(2011)年歯科疾患実態調査結果によれば,8020達成者は38.3%(推計値)であると報告され,80歳の3人に1人以上が達成者であることが明らかとなった1).8020の数字の意味について,「80」は“高齢者になっても”,または“生涯を通して”という意味が込められていることは想像できる.では「20」に関してはというと,これは,少なくとも20本以上の歯があれば,ほとんどの食べ物を噛むことができる,すなわち食べ物をしっかりと“咀嚼”して美味しく食べることができるということからきている数字である.昨年7月に発表された健康日本21(第二次)における,歯・口腔の健康の目標の第1番目に「口腔機能の維持・向上(60代における咀嚼良好者の割合の増加)」が挙げられている2).すなわち,しっかりと噛むこと,噛めることを保持・増進することは,口腔保健の最重要課題であると言っても過言ではない.
また,食育の分野に目を向けると,歯科保健分野からの食育を推進するために,平成21(2009)年には「噛ミング30(カミングサンマル)」というキャッチフレーズが作成された3).さらに,第2次食育基本計画では,食育の推進の目標に関する事項の中で,「よく噛んで味わって食べるなどの食べ方に関心のある国民の割合の増加」が示されている4).これらの活動は,よく噛むこと,咀嚼することの重要性を国民に広く認知してもらうためのメッセージであると言える.そこで本稿では,咀嚼(噛むこと)の役割,効果について解説するとともに,噛むことの大切さの伝え方,嚥下障害についても述べる.
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