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第13回日本言語聴覚学会において「大規模災害への対応」のシンポジウムが行われたのは東日本大震災が発生してからおよそ1年3か月が経過した時期であった.発災直後,一般社団法人日本言語聴覚士協会では会長を本部長とする災害対策本部を立ち上げ,都道府県士会を通しての会員の安否確認,生活機能対応専門職チームやリハビリテーション支援関連10団体の構成団体として被災地での支援,募金活動とその管理,会員を中心に各所から寄せられた物資の管理保管と被災地への配送,支援ボランティアを会員から募集し必要な地域へ派遣する調整業務などの活動を継続して行ったが,協会全体の対応としてどうであったかと問われれば,決して十分な対応ができたとはいえない状況であった.協会として大規模災害への対応は確認をしておくべきテーマであり,本シンポジウムを,東日本大震災におけるさまざまな経験を共有し,今後,このような大規模な災害が発生した場合にとるべき方向性を考えるものと位置づけた.シンポジストの方々はそれぞれ,県の職員としての立場,ボランティアの一員としての立場,県士会としての立場などさまざまな立場で災害対応や支援活動にかかわった経験について話された.学会会期の最後というシンポジウムの時間にもかかわらず,会場を埋めた方々は1つ1つの経験に自分の思いを重ねながらじっと聞き入り,このテーマに対する関心の高さがうかがわれた.
シンポジウムの中で,まず改めて明らかになったのは一般の方々,特に行政の方々に,言語聴覚障害のこと,そして言語聴覚士の業務がほとんど理解されていないことであった.障害が外から見えないこともあって,避難所などで言語聴覚障害の方々が情報補償されない状況に置かれ,生活に支障をきたした事例が多く,一方で,そのような方々の発見と適切な対応のために言語聴覚士が活用されたという事例はきわめて少ないという状況であった.他のリハビリテーション関連職種に比べ格段に理解されておらず,正確に認識されていないことは,平時から言われてきたことであったが,大規模災害に際して改めてこの事実を突きつけられた.職能団体として広報活動や啓発活動の推進は優先順位の高い課題であると思われる.
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