--------------------
編集後記
藤田 郁代
pp.177
発行日 2011年11月15日
Published Date 2011/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.6001100306
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
この編集後記はモントリオールのホテルの一室で書いています.本日はこの地で開催されたAcademy of Aphasiaの最終日で,刺激されることが多かった学会の日々を思い出しながら書いているところです.学会に参加して感じたことは,単語処理や構文処理に関する認知神経心理学的モデルが臨床家や研究者の共通概念としてしっかり定着しており,それを基盤として発展的議論がなされていること,また既存モデルの検証ではなく,臨床知見との突き合わせによって新しい理論を創造することにはっきりとした志向があることです.本年はBrocaが左半球に言語野があることを証した論文,すなわち“tan……tan……”としか話せなかった症例Leborgne氏の症状と剖検結果を発表してから150年目に当たりますが,学会ではBroca失語を巡るDejerineとMarieの歴史的討論(1908年)が文献に即し朗読劇として忠実に再現されました.また,その討論テーマの答えをNia Dronkers氏が現代のneural connectivity理論を用いて明解に解いてみせました.Dronkers氏の解説は非常に興味深く,150年にわたる言語とその脳基盤に関する研究の蓄積と発展をひしひしと感じました.ちなみにDejerineを演じたのはWhitaker氏で,MarieはLise Menn氏が演じました.Dronkers氏は来年来日し,言語のneural connectivityについて講演されることになっています.
Copyright © 2011, Japanese Association of Speech-Language-Hearing Therapists. All rights reserved.