特集 ケアリングコミュニティと地域リハビリテーション
実践紹介
高次脳機能障害者のデイを始めて10年
藤井 か代子
1
1デイサービス夢子
pp.319-321
発行日 2020年11月15日
Published Date 2020/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003201238
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はじめに
「この人を殺して私も死にたい」。相談を始めるなりAさんの妹は言った。母親は憔悴しきった様子で始終うつむいていた。当のAさんは3人で来た車から降りることができない。2012年7月,デイサービス夢子を開設した翌年(今から8年前)のことである。
Aさんは,高速道路のインターチェンジでのバイク事故で,事故直後の状況は不明でした。搬送された病院で最初の質問に全て答えられたことから,頭部より整形外科の治療が優先されたとのこと(家族の弁)。診断名は,多発骨折,脳外傷(深部白質,脳梁のびまん性軸索損傷の疑い)であった。その後,リハビリ病院へ転院,脱抑制,徘徊が頻回であったため,精神科への転院(医療保護入院)となるが),保護期間経過で退院となる。在宅では家族での対応は難しいため,ショートステイ的な一時入院や障害者施設を利用する。それでも,なかなか落ち着かず困り果てていた時に,「高次能機能障害者のデイサービス」として立ち上げていた「デイサービス夢子」(以下,「夢子」)につながることとなった。
「夢子」は,2011年5月1日に千葉県松戸市に立ち上げた介護保険のデイサービスである。所長が高次脳機能障害者への支援の経験があったので,高次脳機能障害者を中心としたデイとして開設された。
見学の当日,Aさんは到着1時間後,トイレに行きたくなったことを契機に車から降り部屋に入ってきた。職員は少しだけ話すことができた。少しでも話すことができること,トイレに行きたくなれば部屋に入ることができるということが明るいヒントとして心に残った。「夢子」は週4日の受け入れを決めた。
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