特集 地域に「はたらく」をつくる
各地のモデル事業—中国茶を通じた障害者就労支援
青井 一展
1,2
1NPO法人ここ・からワークスおかやま
2医療法人春洋会 青井医院
pp.410-411
発行日 2018年6月15日
Published Date 2018/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003200874
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はじめに
「ここ・からワークスおかやま」は,2017年1月設立の新しいNPO法人で岡山県の南端,瀬戸内海に面した玉野市にある。ココロとカラダを共に大切にし,さあここから地域の見えるところで働き始めようという思いを込めた。
筆者は精神科クリニックを開業しているが,十数年前から精神障害者のための地域活動支援センターの運営にもかかわっており,クライアントにセンターの利用を勧めてきた経緯がある。2015年の日本精神神経科学会に参加した際,日本財団の竹村利道氏の講演を聴き,「はたらくNIPPON!計画」1)の立ち上げを知り,その内容に感銘を受けたことが新しい事業スタートのきっかけとなった。
講演後,電光石火の早業で竹村氏が玉野にやって来た。作業所を見学してもらい檄を飛ばされた。「これでいいんですか?!」。時給は60円,1カ月の平均工賃は7,200円であった。
「はたらくNIPPON!計画」に参加しようと腹をくくり,そこから試行錯誤の毎日が始まった。何をどうすれば笑顔で誇りを持って働けるのか? どうすれば適正な労働の対価が得られるのか? わからなかった。瀬戸内海の景観や地域の特徴を生かした事業を探ったが,法律や行政の壁,地域住民の思いとぶつかり,事業内容や場所の選定で候補地7カ所を転々とした。最終的にたどり着いたのが,老朽化で解体撤去される予定の旧銀行の建物だった。中国地方の中国銀行で中国茶を楽しむという駄洒落のような計画が動き出した。
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