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クリニカルクラークシップとは
一般社団法人日本作業療法士協会は超高齢社会の到来に向けて「地域生活移行・地域生活継続支援の推進」1)の方針を明確にしてきた.地域障害者,またそれが懸念される何らかの困難をもつ方に対して,対象者の人生や生活を基盤とした思考のできるOTの育成が課題となっている.臨床教育は,作業療法のフィールドに出て臨床を学ぶことであり,OT養成教育の中で重要な部分を占めている.それは,理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則では810時間,世界作業療法士連盟の示す教育最低基準では認可条件には標準1,000時間以上の臨床教育を規定している2)ことからも理解できる.OT養成教育は学内における基礎教育,専門基礎教育と,臨床教育を含む作業療法専門教育から成り立っているため,本稿では臨床実習と称せずに臨床教育と称し,臨床実習指導者を臨床教育者と称することにしたい.OT教育が日本に登場してから現在まで約40年間行われてきた診断的推論を用いた症例報告型臨床教育方式を一度見直し,対象者の生活に寄り添うOTをより多く排出するのに有効な臨床教育を行うために,筆者らはクリニカルクラークシップ型臨床教育を提唱する.
クリニカルクラークシップとは,学生が主体となり対象者とのかかわり合いの中から臨床医学を学ぶ「診療参加型」の臨床教育方式を指す.クリニカルクラークシップは100年以上前に米国の医師教育から生まれた3).日本の医師教育では医師の免許をもたない医学生が診療行為に参加することに対して社会的合意が確立していなかったため,ポリクリやベッドサイドティーチングという診療見学型の実習が行われてきた.しかし学生が病棟で見学するだけでは有効な学習にならなかった.そのため学生がチームの一員として自ら意欲的に参加し,効果的に学習するため,実際の診療にかかわる臨床実習方式としてクリニカルクラークシップが行われるようになってきた.クリニカルクラークシップの定義は,①医学生が医療チームの一員として実際の患者診療に従事する,②指導医の指導あるいは監視のもとに許容された一定範囲の医療行為を行い医学生としての責任を負う,③将来医師となるために必要な知識,技能,態度および価値観を身につける3),とされている.この定義は,医療行為を治療的介入に,医学生および医師を作業療法学生,OTに替えても差し支えないと考えている.クリニカルクラークシップ型臨床教育が今までの症例報告中心型臨床教育と大きく異なる点は,作業療法のプロセスに沿った臨床教育ではなく,私たちが臨床で行っているカルテからの情報収集や各種の検査,基本動作やADLの指導,作業の実施等に含まれるさまざまな技術を細分化した技術単位で学ぶことである.
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