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はじめに
筆者は医局内の異動で,2004年より訪問リハ処方を出す医師として地域へ出ることになりました。それまでは,大学病院,リハセンター,回復期リハ病院の立ち上げ,一般病院でのリハ科など,病院内でリハ専門医の立場で仕事をしており,仕事の手応えを十分感じ,満足し,自信を持っておりました。違うフィールドへの単なる興味から訪問を始めてみましたが,思いのほか戸惑い,在宅でリハを提供する難しさを知ることとなったのです。
第1に,在宅では病院のような装備環境がありません。医療機器も歩行補助用具も試用のための補装具も持ちこめません。都心では住環境も悪く,場所の確保もままならない状況です。
第2に,基本的に訪問者のみ,一人で対応することです。訪問日の体調を確認し,今日リハをやるかどうかも含めて小さいことも担当者が判断を積み上げていきます。病院では医療的判断は医師や看護師,その他についてもすぐに別の療法士同士相談ができます。回復期病棟入院患者よりも医療依存度が高く,状態像も重度であることが多いのが訪問の現場です。別の見方をすれば,そのような方たちに対して,病院という作られた空間ではなく個別の療養の場でリハを展開することは,活動度の低い方のわずかな能力を生かすうえでは大変有意義なのは間違いありません。
第3は上記とも関連しますが,担当者は療法士の専門職域を超えて包括的にかかわらなければならないことです。PTは理学療法だけを,OTは作業療法だけをやればよいのではないのです。障害によっては,あるときはMSW,あるときはSTであることが必要となります。
場所や環境が整わず,障害・状態像が重度で複雑となれば,一療法士の力量が問われますが,病院で研鑚を積んできた多くの療法士にとって,全身状態の把握やリスク管理,そして社会的背景を含めた全体像の把握には不慣れです。このような問題解決をするためのスキルを学ぼうというのがこのシリーズの目的です(表)。
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