特集 ライフステージに合わせた地域支援
発達障害ネットワーク支援の実践例
塚本 千秋
1
1岡山大学大学院教育学研究科
pp.512-519
発行日 2016年8月15日
Published Date 2016/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003200425
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
筆者は,主に思春期・青年期事例を対象に診療をしてきた精神科医である。研修医時代から不登校やひきこもりに関心があり,分析的な精神療法に興味をもっていた。当時(昭和の終わり)は,今日のように発達障害の概念が明確にされていなかったため,長期間にわたって家庭にひきこもり,時に暴力的となる青年に対して,「どうも対人関係がぎこちないな」などと感じながらも,個人精神療法の原則のもと,一人で悪戦苦闘をしていた。家族からのSOSがたび重なる時には,自宅に往診して入院させるなど,けっこう危ない橋も渡ってきた1)。
10〜15年前,発達障害に関する知見が飛躍的に増え,遅まきながら筆者も理解を深めたが,その結果,以前治療した事例についても,「発達障害と理解して,複数の支援機関で支援すれば,もっとうまく(安全に)行えたかもしれない」と考えるようになった。
その後,平成20〜22年には,厚生労働科学研究「青年期・成人期の発達障害に対する支援の現状把握と効果的なネットワーク支援についてのガイドライン作成に関する研究」(代表:近藤直司)2)に加えていただき,執筆にも携わった。本稿では,自らの臨床経験とガイドライン作成過程での議論を踏まえ,ネットワーク支援について論じ,実践例を紹介する。なお事例はガイドラインで作成した架空事例をさらに改変した架空事例である。
Copyright © 2016, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.