特集 重複障害
「重複障害」の特集にあたって
寺山 久美子
1
1東京都心身障害者福祉センター
pp.141
発行日 1979年3月15日
Published Date 1979/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518101860
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「重複障害」ということばは,特に定義があるわけではなく,「障害を2つ以上併せ持つ」ということに使われる.特殊教育の分野で最初に用いられたようである.特殊教育では,周知のように盲,ろう,肢体不自由,精神薄弱、病弱というように障害別に学校教育が分れている.ところが,肢体不自由教育で扱ってきた脳性麻痺が多数を占めるようになり,しかも運動障害ばかりでなく,知能障害,感覚障害,行動異常などの,随伴する障害が大きな問題となってきた.従来の特殊教育の世界では,これらの随伴障害のない,あっても問題になるほどではない軽い脳性麻痺を扱っていればよかった.ところが養護学校の義務化を昭和54年度にひかえ,重い脳性麻痺,随伴障害のある脳性麻痺も指導していくことになった.ここにおいて,従来の分類にはない「重複障害」,とくに「重度・重複障害」のニードが出てきたわけである.重複障害を原因別に考えると,①同じ原因により,症状あるいは障害が2つ以上あらわれるもの(たとえば知能障害を伴った脳性麻痺),②一方の障害が原因となり,副次的に次の障害があらわれるもの(たとえば,精神薄弱による運動発達の遅れ),③別の原因により,たまたま2つ以上の障害を併せもつもの,の3つがあげられる.③については別だが,①,②に関しては,医学では「合併症」ということばを使って,重複障害とは言わないのが一般のようである.
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