Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
内容のポイント Q&A
Q1 重複障害とは?
重複障害とは,視覚障害,聴覚または平衡機能障害,音声・言語または咀嚼機能障害,肢体不自由,内部障害,知的障害,精神障害,高次脳機能障害のうち2つ以上をあわせもつ場合,あるいは,内部障害の中の7つの機能障害である心臓機能障害,腎臓機能障害,肝臓機能障害,呼吸機能障害,膀胱・直腸機能障害,小腸機能障害,ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害のうち2つ以上をあわせもつ場合をいう.
Q2 重複障害の頻度は?
加齢とともに重複障害の頻度は増える.米国の報告では,脳卒中患者は32~62%に虚血性心疾患を合併している.高齢者では心不全患者の33%にCOPDを合併し,COPD患者の25%に心不全を合併している.また,変形性関節症患者では,虚血性心疾患は高齢男性で33%,高齢女性で45%の増加を,心不全は高齢男性で25%,高齢女性で20%の増加を認めた.
Q3 重複障害リハビリテーション医療の特徴は?
重複障害者に対するリハビリテーション(以下リハ)は,各臓器に過剰な負担をかけやすい.意識障害,胸痛,呼吸困難,めまい,不整脈,転倒,骨折等の事故を起こさないように慎重な対応が必要であり,臓器連関の十分な知識,十分なモニターや人的資源が必要である.ただし,きちんとリハを行うことによりリハ効果が高まり,生命予後の延長も期待できる領域もある.
Q4 重複障害リハビリテーションの最近のトピックスは?
持久力は最大酸素摂取量(VO2max)で表され,従来,心臓,肺,筋肉,血液の4因子で規定されるとされたが,最近は,腎臓を加えた5つの因子で規定される.すなわち,腎臓機能障害が加わった重複障害では持久力低下に拍車がかかる.リハ効果を上げるにはきちんとした負荷強度が求められる.従来,リハ処方はFITT,すなわち頻度(F),強度(I),時間(T),種類(T),で構成されていたが,各項目で軽い負荷に終始する傾向があり,リハ効果が十分上がらない施設もあった.そのため最近は,運動処方はFITT-VPとして,運動量(V),漸増/改訂(P)が追加された.VはFITすなわち運動の頻度・強度・時間の積であり,Vを増やすことがリハの効果を増強する.また,サルコペニア・フレイル対策として食事療法も含めた包括的なリハが必要であるとともに,「より広く,早く,密に,そしてつなげるリハ」が必要とされるようになった.
Q5 今後の課題は?
脳・心・肺・骨関節等の臓器連関を考慮して,リハ処方を行うことが必要である.リハ医学・医療従事者は循環・腎・呼吸・代謝疾患の病態生理と障害,心電図,呼吸機能検査,血液ガスデータ等の基本的理解や心・腎・肺・脳・骨関節等の臓器連関の理解が必要である.リハ対象患者の多くが重複障害者となった現在,リハにかかわる職種が重複障害リハのエビデンスを自ら明らかにし,良質なリハプログラムを提供することが喫緊の課題である.
Copyright© 2024 Ishiyaku Pub,Inc. All rights reserved.