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はじめに
認知症は社会的に大きな問題となっており,厚生労働省でも認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン),認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)など,積極的な施策を打ち出している。朝田ら1)の研究によれば,2012年の,認知症者数は462万人,予備群は400万人以上であり,2025年には認知症者数が約700万人に達すると推計される。世界の認知症者数については,WHOより2030年には6,570万人,2050年には1億1,540万人との推計が出されている2)。いずれも急激な増加傾向が示されており,医療・福祉の分野において,さまざまな対策が必要とされている。
このような背景の中,2013年12月にはイギリスのロンドンにてG8認知症サミットが開催され,世界規模での認知症の対策について議論が行われた。さらに,その後,カナダ,日本,アメリカで後継イベントが開催された。日本での開催は,2014年11月であり,「新しいケアと予防のモデル」と題したイベントであった。この会では,海外からのリクエストに応じて,日本のコミュニケーションロボットの展示コーナーが設置され,注目を集めた。また,日本におけるコミュニケーションロボットと認知症者への活用の状況についての報告も行われた3)。さらに,2015年3月には,WHOが主催した閣僚級の会議がジュネーブで開催され,この中でも日本のコミュニケーションロボットの紹介があり4),参加者の関心を引いていた。国立障害者リハビリテーションセンターからは,認知症者を対象とした福祉機器やコミュニケーションロボットの有効性について,文書が提出され,Web上で公開されている5)。このように,認知症者の生活の向上に,福祉機器やコミュニケーションロボットへの期待が高まっている状況がある。
本稿では,これらの背景をふまえ,認知症者を支援する福祉機器とコミュニケーションロボットについて概説することとする。コミュニケーションロボットについては,癒やしを提供するものと,情報を支援するものに分けて記載する。
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