頭蓋頸椎移行部の脊髄AVFの診断と治療

Diagnosis and Treatment of Craniocervical Junction Arteriovenous Fistula

はじめに

　脊髄血管障害は脳血管障害に対して頻度が低い．日本脳神経外科学会Japan Neurosurgical Databaseの報告では，全国の脊髄動静脈奇形の治療件数は2019年において360件であった^1）．発症から診断までの病悩期間は長く，診断の遅れは臨床転帰の悪化をきたす^6）．

　脊髄動静脈奇形は血管解剖の正確な理解が難しい．病変サイズが小さく，脊髄レベルにより血管解剖が大きく異なることなどの理由による．中でも頭蓋頸椎後部の動静脈瘻（arteriovenous fistula：AVF）は，血管解剖が複雑で神経症状が多様であり，診断と治療ともに難しい^2）．

　本稿では，脳神経内科医や整形外科医を対象に，脊髄動静脈奇形のうちまれな頭蓋頸椎移行部AVFについて，神経症状と病態，画像診断の特徴的な所見と治療予後を解説することを目的とする．