Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
手術にあたり,患者の適切な手術体位をとること(positioning)は最適な手術アプローチを確保するために欠かせない.また,術者自身や患者の体の負担を減らし,周術期合併症を減少させ,ひいては手術を成功に導くため重要なステップである.最近の手術台は電動スイッチで体位変換が容易となったため,手術のステップごとに最適な体位に微調整することもできる.さて,本誌において手術体位に絞って特集が組まれたことは従来なかったが,今回,興味深いテーマとして取り上げられた.手術体位といっても,実際は麻酔導入に始まり,術前のセットアップなど手術開始までのさまざまな準備を含めて考える必要がある.
一方,頭蓋頸椎移行部は解剖学的には後頭環椎関節,環軸椎関節を含み,靭帯が重要な要素を占めるなど複雑で特有な構造を有する10).さらに,大きな可動範囲と頻繁な動きを伴うなど機能的にも特殊であることから,不安定性をきたしやすく,固定術が必要となることも多い.また,この部位には延髄・上位頸髄・椎骨動脈などの重要な神経・血管組織が含まれる.こういった特徴は,手術戦略に基づき手術体位を考えるにあたり重要な要因となる.
さて,頭蓋頸椎移行部の手術手技は前方法と後方法に大別することができ,それぞれ除圧術と固定術からなる.われわれは1991年以降,約300例の頭蓋頸椎移行部病変に対する手術治療に取り組んできた(表1).除圧術では前方,後方法のうち最適なアプローチが選択され,場合により前後合併手術も考慮される.一方,固定術の多くは後方法で占められるが5),数少ない前方法として歯突起螺子固定術は重要である1,13).頭蓋頸椎移行部手術は基本的に対面式の手術用顕微鏡を用いて助手と向き合う形で行われる.われわれは術者が右利きのため,術者は基本的に仰臥位手術では患者の右手側,腹臥位手術では患者の左手側に位置する.ここでは,頭蓋頸椎移行部手術において麻酔から始まる術前のセットアップを含めたpositioningのポイントについて述べる.
Copyright © 2017, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.