機能性筋力低下を見極める徴候

Signs to Detect Functional Weakness

はじめに

　本特集は「目で見て学ぶ脊髄・末梢神経疾患の診察法」ということで，動画の提供が望まれているが，患者の同意面などでなかなか難しく，本稿では図などによる説明に留める．機能性神経障害（functional neurological disorders：FND），すなわち従来いわれたヒステリーについては，筆者はこれまで多くの総説を書いて，ヒステリーの歴史，用語の問題，FNDの頻度，FNDの症候，FNDをどのように診断するのか，FNDの治療などさまざまな点について論じてきた^{17〜21,23,24）}．

　本稿では，機能性筋力低下の診察法に絞って論じる．当誌で3年前に同一テーマの総説を執筆したことがあるが^20），用語も変わっているし，またこの間，新しい機能性筋力低下の陽性徴候を2つ発表したので^22,25），それらも含めて解説する．

　今回のテーマとなる診断以外の重要な点を以下簡単にまとめておく．

・FNDは古代から記載されていた疾患で，神経学の源流でもある．

・FNDはneurologyへの紹介患者の2割前後を占めるcommon diseaseである^23,27）．

・FNDは決して若年女性だけの疾患ではない．女性がやや多いが男性も3割近くを占め，平均発症年齢は40歳で，小児から高齢者まで広く分布する^13）．

・FNDはあらゆる神経症状を呈し得る．

・脳神経内科医の初期診療がFND治療の出発点ともなる^19,21,29）．