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はじめに
機能性運動障害(functional neurological disorder:FND)は,ほかの神経疾患の神経解剖学的ならびに神経生理学的特徴と一致しない広範な臨床症状によって特徴づけられる複雑な疾患であり,生活活動度や生活の質を障害する6).FNDは,詐病(医療や他者からのケアを受ける目的で身体的または心理的症状や徴候を偽装する,自己誘発した怪我や病気など)や仮病(物理的症状や徴候を故意にかつ自発的に生み出し,欺くこと)ではなく,自発的な運動や感覚神経系に起因する運動や感覚の症状が患者にとって不随意に(意図せずに)経験される状態を指す5).
FNDの診断は,神経学的に説明できない徴候,すなわちFNDとしての“陽性徴候”の存在に基づいてなされる1).陽性徴候の詳しい説明は別稿に譲るが,多くの患者は,協調運動を利用した試験(Hoover試験やSonoo外転試験など)における特徴的な反応,give-way weakness,非てんかん発作,視覚またはほかの非生理的感覚症状などの機能的障害を伴うため27),陽性徴候を熟知したうえで診察する必要がある.実際,これらの操作の特異性と感度は,比較のためのゴールドスタンダードの欠如や,ほとんどの研究において盲検化されていないなどの限界もあるため9),1つの陽性所見のみで診断するのではなく,総合的な評価が大切となる場合もある.
FNDの適切な診断に基づく治療はきわめて重要で,未治療では長期にわたって症状が持続し10),平均14年に及ぶ調査では,持続的な症状は障害をもたらし,高い死亡率とも関連することが指摘されている11).ここでは,筆者のこれまでの経験も踏まえながら,FND治療の現在の考え方について整理する.
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