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脊髄損傷に限らず,変性疾患,腫瘍,炎症,脱髄など,さまざまな疾患において脊髄障害を生じ得る.脊髄障害を生じた患者は,原疾患の治療が済んだ後も四肢・体幹の機能障害,痙縮,痛み,排尿排便障害といった後遺症と長年にわたり向き合っていかねばならない.これらの後遺症に対する積極的な介入が,患者のQOL改善につながることは,多くの研究で報告されている.今回,脊髄障害で生じる各種後遺症に対するニューロモデュレーションをテーマに取り上げた.2018年1月号でも「脊髄ニューロモデュレーションの現状」と題して,ニューロモデュレーションが取り上げられているが,近年の同分野の発展は目覚ましいことから,最新の知見を各分野のエキスパートの先生にまとめていただいた.
菊地先生からは脊髄損傷後の痙縮に対するボツリヌス療法について述べていただいたが,最近ボトックスの投与量の増量が承認されたこともあり,より多くの症例で適応が期待されている.河野先生には脊髄損傷後の痙縮に対するバクロフェン療法について述べていただいた.痙縮に対する治療の適応について詳細に解説いただいた.笹森先生には脊髄障害性疼痛に対する脊髄刺激療法(SCS)について述べていただいた.脊髄障害性疼痛の機序,SCSの有効性と推奨度,さらに新たな刺激方法についても解説いただいた.細見先生には脊髄損傷後の痛みに対する反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)について述べていただいた.痛みに対しては非外科的な手段であり,今後のさらなる発展が期待される.益田先生には脊髄損傷に対する呼吸不全に対しての横隔膜ペーシングについて述べていただいた.重度の脊髄損傷患者さんに対する治療手段であるが,命を守る興味深い治療手段といえる.関戸先生には神経因性下部尿路機能障害に対する仙骨神経刺激療法について述べていただいた.歩行可能であっても排尿機能の障害を訴える患者さんにとっては大きな福音となると思われる.坂元先生には神経因性膀胱に対するボツリヌス療法について述べていただいた.神経因性膀胱自体にボツリヌスを使用することは思いもよらぬことであったが,難治性過活動膀胱に対して有効なようだ.
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