特集 脊椎・脊髄感染症の診断と治療—最近の知見
特集にあたって
永島 英樹
1
1鳥取大学整形外科
pp.131
発行日 2022年8月9日
Published Date 2022/8/9
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002201808
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社会の高齢化や易感染性宿主の増加により脊椎感染症は増加しているといわれており,これらの背景からその治療に苦労することも多い.手前味噌で恐縮だが,2000年頃に起炎菌を同定するため組織を培養へ提出するまでは抗菌薬を投与しないと宣言した.当時の日本では,脊椎感染症を疑う患者がいれば培養などせずにいわゆる経験的抗菌薬投与を開始する施設がほとんどであったので,当初は抗菌薬投与が遅れて重症化したらどうするんだと非難囂々であった.しかし,培養提出しないと抗菌薬が開始できない状況になったため,担当医の眼の色が変わって自ずと1〜2日の間にバイオプシーが完結する体制ができあがっていた.
起炎菌の同定を本気でしていなかった時代は,当然その同定率は散々たるものであり,ほとんどが黄色ブドウ球菌と結核菌であった.確かに当時の経験的抗菌薬投与は黄色ブドウ球菌に効くものを選ぶようにと教育を受けていた記憶がある.しかし,起炎菌同定を本気でするようになってからはさまざまな種類があることに気がついた.さらに,培養検査法が生化学的性状分析から質量分析法へと進化して,今まで聞いたことがないような弱毒菌も検出されるようになり,起炎菌の種類も実に多種多様である.
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