特集 転移性脊椎腫瘍治療大全
特集にあたって
永島 英樹
1
1鳥取大学整形外科
pp.671
発行日 2024年12月25日
Published Date 2024/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002202388
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
日本におけるがんの新規患者数は年々増加しており,2023年には約100万人が新たにがんと診断されていて,がんによる年間死亡者数は全死亡者の約30%にあたる約37万人に達し,いまだに死因第1位の座にある.転移性脊椎腫瘍に関する正確な疫学的データはないようだが,「骨転移診療ガイドライン(改訂第2版)」によれば日本での骨転移年間患者数は8,400人から16万人と見積もられていて,乳がんや前立腺がん患者の約75%,肺がんや甲状腺がん患者の約50%,消化器がん患者の約20%に剖検で胸椎や腰椎に転移があったという日本からの論文も紹介されている.
化学療法や手術の進歩によりいわゆるがんサバイバーも増えてきた.しかし,これらの治療適応には患者のPerformance Status(PS)も指標として使われていて,PSが2以上になると合併症リスクが高くなることから,化学療法の適応ではないとされることも多い.転移性脊椎腫瘍は,痛みや麻痺などを生じさせることでこのPSに大きな影響を与えるため,化学療法などを導入するためにはこれらの症状に対して適切かつ迅速な介入が必要となり,手術を行うことも多くなってきた.長期予後が見込めない患者には手術を選択しない施設も多かったように思うが,この10年で転移性脊椎腫瘍の治療戦略が根本から変わったと感じている.

Copyright © 2024, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.