特集 80歳以上の脊椎脊髄損傷
特集にあたって
永島 英樹
1
1鳥取大学医学部感覚運動医学講座整形外科学分野
pp.617
発行日 2020年6月25日
Published Date 2020/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002201436
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1990年代初めに日本パラプレジア医学会(現・日本脊髄障害医学会)が行った脊髄損傷全国調査によれば,当時の年齢分布は20歳あたりと60歳あたりにピークがあった.ちょうど講義を受け持つ時期と重なったので,「無茶をする年齢層と,気持ちは若いけれども身体がついてこない年齢層に多い」と学生には教えてきた.しかし,最近では70代後半〜80歳あたりに1峰性の分布を示している報告が多く,ドイツからも同じような結果が示されている.
当院に搬送されてくる脊髄損傷患者でも,80歳以上の占める割合が激増している.剪定中に脚立から落ちたとか,歩行中に段差を踏み外して転倒したとか,比較的軽微な外傷が多く,交通事故にしてもその多くが自損事故である.私たちの経験では,American Spinal Injury Association Impairment Scale (AIS)がAやBである80歳以上の頸髄損傷では,6カ月以内に約半数が,2年以内にほぼ全員が死亡しており,CやDでさえも筋力はいくらか改善するもののADLが自立できる患者はほとんどいない.夜中に呼ばれて高齢者に緊急手術を行っても,術後の現実をみると徒労感に襲われることも少なくない.
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