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癒着性くも膜炎は髄膜炎,脊髄外傷,くも膜下出血ばかりでなく,脊椎手術,脊髄造影や腰椎麻酔など医原的要因にも深く関連し,さまざまな疾病や原因により二次性に生じることが多く決してまれな病変ではありません.その病態には髄液循環不全や癒着による神経係留,空洞症や髄液の局所貯留による神経圧迫,くも膜炎や軟膜炎による血流障害などが関与し,個々の症例により複雑で多様な臨床像を呈します.進行性難治性であることが多く,治療戦略も悩ましいため手術も敬遠されやすい病変です.脊髄神経疾患に携わる医師,特に脊椎脊髄外科医にとっては絶対に周知するべき病態であり,治療選択肢や外科治療の成績やリスクについて把握しておく必要があります.
本企画ではこの分野のエキスパートの先生方にさまざまな観点から執筆いただきました.久保田基夫先生には癒着性くも膜炎の原因と病態について総論的な内容でまとめていただきました.多くの症例は原病因から1年以内で発症するものの10年以上の経過で臨床画像所見が顕著となる例もあり,長期的な注視も必要です.金景成先生にはくも膜下出血後も発生率はまれながら見逃されやすい点について指摘いただきました.河野修先生には脊椎脊髄損傷後の癒着性くも膜炎,脊髄空洞症の病態と治療について膨大な脊損症例を振り返り発生率や外科治療の変遷を教えていただきました.西村由介先生には術後に生じるくも膜炎と病態に応じた外科治療の組み合わせ方法を,尾原裕康先生には硬膜欠損部や癒着防止のために使用されている硬膜補塡剤についてもこの疾病に関連する問題点が残されていることを教授いただきました.内藤堅太郎先生には癒着性くも膜炎の外科治療についてシャント術のポイントを中心に解説いただき,癒着剝離術の適応についても言及いただきました.
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