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脊髄病変において四肢体幹の症状とともに膀胱直腸障害や性機能障害を伴うことは周知の事実です.しかしながら,実際の臨床では重篤な症状を認める,あるいは患者さんからの能動的な訴えがない限り,医療側も注意を払うことは乏しく,カルテ上も明記されることは少ないのが現状です.脊髄脊椎疾患の外科治療においても膀胱直腸障害の有無は手術適応を判断する重要な因子ですが,脊椎変性疾患などでは詳細な症候や機能評価を行うと,本人でさえ気づいていない潜在的な軽症,中等症例も多く発見され,有病率は予想以上に高いものと考えます.今回は日常診療でも遭遇の機会が多い圧迫性脊髄障害や腰部脊柱管狭窄に伴う馬尾障害,神経内科疾患なども含めた排泄・性機能障害の評価と治療法についてエキスパートの先生方に執筆をいただきました.
関戸哲利先生には脊髄障害に伴う神経因性下部尿路機能障害の評価法と診療アルゴリズムについてガイドラインに則して解説いただきました.仙石淳先生と渡邊水樹先生には圧迫性頸髄症と腰部脊柱管狭窄に伴う排尿症状と障害の発生頻度および術後改善状況について報告いただきました.榊原隆次先生には神経内科領域である多発性硬化症や脊髄炎,髄膜炎が排尿機能に及ぼす影響についてまとめていただいております.兼松龍先生には手術を行った圧迫性脊髄病変において排便臨床スケールを用いた評価法と術前後での変化を,乃美昌司先生には保険適応となりました脊髄障害による神経因性大腸機能障害に対する経肛門的洗腸療法について詳しく説明いただいております.高橋良輔先生には性機能障害の機序を男女の調査も含めて報告いただき,その治療法についても解説いただいております.広田健吾先生にはまれではあるものの特異的である腰部脊柱管狭窄症に伴う歩行誘発性勃起について,小堀善友先生には脊髄損傷後の射精障害と妊孕性を維持するための対処法,治療法を詳述していただきました.
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