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頸部神経根症の多くは加齢変性疾患に伴い発生し,超高齢社会においてまれではない症候です.保存治療が優先されるのはご存知の通りですが,経過中は高度な痛みやしびれのため日常や社会生活に苦しむ例も多く,患者さんから早急かつ適切な対応が求められる疾患の1つです.また,一部の症例は難治性疼痛の遺残や筋力低下,筋萎縮が進行し外科治療も考慮されます.日常診療で遭遇する機会は多い疾患であるにもかかわらず,いまだ保存治療についてもエビデンスレベルの高い治療法は確立されておらず,適切な外科治療のタイミングや術式選択についても議論が残ります.近年,治療オプションはさらに多様化しており,最も効率的な治療を再考するためにも各種治療法を整理し,最新の動向を確認する必要があり企画いたしました.今回は特に,一般的な保存治療が奏効しない場合の穿刺手技や外科治療についてまとめていただいております.
2019年に米国から出た報告では(Spine 2019;44:937-942),最終的に頸椎前方手術に至った頸部神経根症例約12,500例において,保存治療の内訳は理学療法18%,装具療法13%,ブロック療法24%であり,薬物治療についてはnarcotic use 41%,NSAIDs 18%,Gabapentin 18%の使用状況で,一定の保存治療指針はないようでした.診断および保存治療のための必要経費は1例あたり1,150ドルであり,その6割は診断,4割は保存治療の費用であり,さらに頸椎前方除圧固定術では22,500ドルの経費が必要であったとされており,手術にまで至ると格段の医療費拡大が指摘されています.この状況を考慮すると,治療関係者が正しい診断のもと,至適な治療指針を共有することにより費用対効果を含めた洗練された治療が施せるかと思います.
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