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はじめに
パーキンソン病(PD)患者は,首を前方に突き出してやや下げ(頸椎の生理的後弯は保持),体幹を軽度前傾で前屈,ときに側屈させ,肘関節や膝関節が屈曲する姿勢を呈する.この姿勢異常は早期から認められるが,ドパミン系製剤に反応を示すことが多い.一方,C7-T12を中心として45度以上,もしくはL1を中心として30度以上高度に腰が前屈するcamptocormia,10〜15度以上側屈する斜め徴候(Pisa症候群),頸椎の生理的前弯が消失するほどの高度の首下がり(dropped head syndrome)など,日常生活に影響を与える重度の姿勢異常を呈する症例もある.これら高度の姿勢異常は,内科的治療にしばしば抵抗性であるため,その病態の理解に基づいた対応が必要となる.
高度な姿勢異常の病態は,主には筋強剛や体軸のジストニアに伴う屈筋群と伸筋群の筋緊張のバランス障害が原因と考えられているが,それ以外にも局所性ミオパチーによる筋力低下,中枢性の固有感覚障害による身体図式障害,空間認知機能障害など,多彩な因子が関与する(図 1).また,ジストニアに伴う姿勢異常から二次的な筋障害(stretch injury)をきたし,ジストニアと筋原性の病態が混在する場合も少なくない.姿勢異常が持続すると,脊椎の変形や関連する結合織の変化も助長され,ジストニアの関与がわかりづらくなる可能性もある.さらに,抗パーキンソン病薬,コリンエステラーゼ阻害薬などの追加後に発症,増悪する例もある.加えて,姿勢異常をきたす基礎疾患は多岐にわたるため,適切な鑑別が必要となる.以下,3種類の姿勢異常について,用語の由来,定義,頻度,原因疾患と病態,治療について述べるとともに,脊椎手術の位置づけについてまとめる.
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