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はじめに
パーキンソン病(Parkinson's disease)は,中脳ドパミン細胞の脱落により,振戦,筋強剛(固縮),動作緩慢(無動),姿勢反射障害などの運動症状を呈する疾患である.これらの運動症状を4大症状と呼び,その他も含めて,運動症状全般をパーキンソニズムと呼ぶ8).パーキンソン病では,4大症状のほかにも,姿勢異常を呈することが知られている.その多くは前傾前屈姿勢である(図 1).初期から前傾前屈姿勢はみられるが,患者の訴えとして,姿勢の異常を訴えてくることは比較的少ない.4大症状に起因するふるえ,歩行障害などで日常生活に支障をきたすことが多いためである.しかし,進行してくると,前傾前屈姿勢が悪化してくるほか,さまざまな姿勢異常をきたし,高度になると,それ自体で日常生活に支障をきたすようになる.そのような姿勢異常には,①腰曲がり(camptocormia),②ピサ症候群(Pisa syndrome),③首下がり(dropped head syndrome)などがある.これらの姿勢異常に対しては,パーキンソン病治療薬の効果が乏しいため,しばしば治療に難渋する.また,容姿の問題のみならず,頸椎症,腰椎症などの脊椎疾患を併発し,それによる頸部痛,腰背部痛,手足のしびれ・痛み,歩行障害などを合併する場合も多い.骨粗鬆症を有する患者などでは,姿勢異常から圧迫骨折をきたす場合もある.
原因としては,これらの姿勢異常の初期には,臥位で姿勢異常が消失あるいは軽減し,立位や歩行時に悪化するため,体幹ジストニアが主たる病態機序であるとする立場がある.その姿勢異常から二次的な筋障害をきたし(stretch injury),さらに姿勢異常が悪化するということが想定されている.進行し,姿勢異常が持続すると,脊椎の変形,結合織の変化をきたし,姿勢異常が固定してしまうと考えられている.一方で,ミオパチーが傍脊柱筋などの体幹筋に生じることが主たる病態機序であるとする立場もある.その筋力低下を補うために,周囲の筋に代償性の筋肥大,筋過活動がみられることが想定されている.その他,筋強剛,脊椎の変形,前庭機能障害,傍脊柱筋の固有感覚障害などで説明する立場もある9).特に,姿勢異常が持続すると,さまざまな病態機序が複雑に関係してくると考えられる.ドパミンアゴニストを中心とするパーキンソン病治療薬により誘発される場合も多い.以下に,3種類の姿勢異常,診断,治療について述べる.
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