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はじめに
成人脊柱変形(adult spinal deformity:ASD)は年齢とともに脊椎や椎間板の変性や変形が進行し,日常生活に支障をきたす疾患である.超高齢社会の日本では,脊柱変形を有する成人患者は今後ますます増えていくと考えられる.ASDに関連する症状は,腰下肢痛,機能障害,心理的影響,呼吸機能障害,胃食道逆流症,歩行障害,立位保持障害などがある.医療の進歩に伴い医薬品や医療機器が開発されているが,薬物療法ではASDに関連する上記の症状を根本的に改善することは難しい.脊柱変形に対する矯正手術治療は,健康関連quality of life(QOL)を改善する科学的根拠が報告されているが11),変形を矯正するためには長範囲の固定が必要となり,生理的な脊椎の可動性が失われるとともに患者への侵襲は大きい.近年,術中脊髄モニタリング,脊椎ナビゲーションシステム,超音波手術器,低侵襲開創器,止血器などの手術支援デバイスの進歩は著しく,手術の安全性の向上や低侵襲化に寄与し,手術加療の恩恵を受けられる患者は増えている.日本では国民皆保険制度の下,必要な医療を必要な患者に提供することができる環境にある.しかし,医療の財源は無尽蔵ではなく,日本の皆保険制度を維持するには,増大する医療費を抑制しつつ医療の質を引き上げる,“効率的”な医療を提供するシステムを考える必要がある.そのために医療経済評価が必要である.医療経済評価では,費用対効果分析による定量的な分析と,その結果をもとにアプレイザル(appraisal:評価)というプロセスの過程で倫理的・社会的影響などを議論する16).本稿では,ASDに対する手術加療の費用対効果分析に関する研究をレビューし,報告する.
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