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はじめに
椎弓形成術はわが国で開発され,今や広く世界中に普及した,わが国の脊椎外科が誇る術式である5).その除圧の機序は脊柱管の拡大によるbow stringing effectで,脊髄が後方にシフトし前方圧迫要素から脊髄が逃れる,いわゆるindirect decompression(間接的除圧)である(図 1a,b)1).
椎弓形成術は多椎間病変に対する同時除圧が可能であるため,多椎間に骨化巣がまたがることが多い頸椎後縦靭帯骨化症(ossification of the posterior longitudinal ligament:OPLL)に対する術式として好適である.また,われわれ脊椎外科医にとって慣れ親しんだ後方アプローチで手術が行えるため,前方アプローチで遭遇し得る気管・食道・総頸動脈・椎骨動脈といったvital organsへの接近の心配がないこと,気管圧排操作がなく後咽頭腔への出血・血腫形成がないため上気道閉塞などの気道関連合併症の危惧がないことは,前方手術と比較したときの椎弓形成術の大きなメリットである.また,indirect decompressionであり,前方手術のように骨化を直接操作しなくてよいことから,髄液漏などの合併症発生率が前方手術よりも著しく低く,技術的難易度が高くないことも大きな利点である.
現在までに諸家から頸椎OPLLに対する椎弓形成術の良好な成績が多数報告されている8).椎弓形成術には大きく分けて片開き式と両開き式があるが,両者の成績には有意な差はない9).また,固定術を併用しないことから隣接椎間障害の危険が低く,長期成績も安定していることが報告されている4).これらの理由から頸椎OPLLには椎弓形成術が最も広く行われており,わが国では実に全OPLL症例の90%以上が椎弓形成術を適応されている.まさしく頸椎OPLLに対するgold standardというべき術式であることは論を待たない.しかしながら,椎弓形成術が素晴らしい術式であるがために,かえって頸椎OPLLであればほぼ無条件に椎弓形成術を適応してしまい成績不良に陥ってしまう,いわゆる「とりあえずラミノプラスティー」(清水敬親先生考案の造語)に陥ることが懸念され,実際そのような症例に遭遇することも少なくない.
ひとくちに頸椎OPLLといっても,骨化の形態・大きさ(脊柱管占拠率)・頸椎アライメント・椎間可動性などさまざまな要素により症例ごとに病態が大きく異なるため,すべての症例を椎弓形成術のみでカバーできるとは考え難い.椎弓形成術のさらなる成績向上のためには,椎弓形成術では成績不良になり得る症例の選択,すなわち適切な術式選択が必須であろう.
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