- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
超音波検査は侵襲がなく簡便であり場所や時間を選ばない.最近では画質も格段に向上にしているため,どの分野においても,また診断だけでなく治療においても非常に有用な検査手技となっている.リアルタイムで観たいものを観たい方向から観察できるだけでなく,血流を可視化できたり,組織の硬さを測定できたりと,付随する機能の発達も著しく,今後あらゆる分野でさらに応用が広がっていくと考えられる.一方,脊椎脊髄外科分野では,脊髄が骨に囲まれていることもあって超音波検査の応用が長い間進まず,椎弓切除後の脊髄や馬尾の除圧状態の術中確認に用いられるだけの時代が長く続いてきた.しかし,最近ようやくさまざまなシーンで超音波検査が用いられることが多くなり,その有用性があらためて注目されている.
このような時代背景を鑑みて,今回は脊椎脊髄外科医が知るべき超音波検査について特集を組んでみた.血管確保と同様,神経根ブロックも超音波ガイド下で行われることが一般的になってきている.手技の正確さだけでなく,患者の安全や検査の苦痛軽減の面からもきわめて有用である.このように神経根の位置を確認するだけでなく,その腫脹の程度も計測することができ,それが椎弓形成術後C5麻痺の予測因子となり得る.術中における除圧後脊髄の評価は大変わかりやすく,依然最も有用な超音波使用法の1つであるが,一部の術式では術後にも脊髄の状態を観察できる.頸椎椎弓形成術後閉創しても脊髄が拍動しているのは予想範囲内かもしれないが,その拍動パターンが頸椎の屈曲伸展によって変わることは今まであまり知られていなかったのではないかと思う.また,拍動の消失を術後硬膜外血腫除去術の適応の指標とするのも実際的で役に立つ.さらには,非特異性腰痛に対してブラインドで行われてきた各種ブロックも,超音波ガイド下で行うことにより正確さを増すことができる.それだけでなく,狙ったところへ確実に薬液を注入できるため,治療効果をみることによってより明確に病態を把握でき,それに基づいて新しい治療法を開発できる可能性も出てきている.
Copyright © 2020, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.