特集 C5麻痺の今
特集にあたって
根尾 昌志
1
1大阪医科大学整形外科
pp.159
発行日 2017年3月25日
Published Date 2017/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002200560
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頸椎椎弓形成術は,ほぼ完成された術式といってよい.比較的簡単で,その長期成績は良好であり,現在日本の頸椎外科では最もポピュラーな手術であろう.欠点といわれた軸性痛も,傍脊柱筋を愛護的に扱い術後早期にカラーを外すようになってから,臨床ではほとんど問題にならなくなった.
でも,最後の砦がある.それが「C5麻痺」である.ある程度経験のある脊椎外科医なら,1度や2度は痛い目にあったことがあるのではないだろうか.症状も独特で,術直後には普通に上肢挙上できていたのに数日経ってから手が挙がらなくなってくる.多くは一定の期間後に回復するが,後遺症が残ってしまう症例もある.頻度が高いため症例数が多く,それゆえ徹底的に研究され多くの説が提唱されているのに,真の原因がつかめない.したがって,さまざまな予測法や予防法も本当にそれを行う手間・時間・リスクに見合うのかどうかがわからない.前方法でも起こることがあり,これがさらに説明を難しくする.近年,後方固定術を併用する症例が増えてきたが,なぜかインストゥルメントを使うと頻発する.術者や施設によって発生頻度に差があるのも解せない.本当に不思議な合併症である.手術が無事終わってもC5麻痺に関しては祈るしかない.しかし,こういったC5麻痺の不思議さはわれわれの研究意欲をかきたてる.こんなに多くの手がかりを残してくれているのに,真犯人がわからない.単独犯か複数犯か? それとも推理小説のように予想もしなかった犯人なのか?
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