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頸椎前方固定術と隣接椎間障害
1950年代にRobinson,Smithらによって,前方から椎間板を摘出し骨移植を行う頸椎前方除圧固定術(anterior cervical discectomy and fusion:ACDF)が報告され,その後60年以上にわたって頸椎椎間板ヘルニアや頸椎症に伴う神経根症や脊髄症に対する標準的な術式の1つとして広く行われている29).ACDFは,ヘルニアや骨棘によって脊髄や神経根が前方から圧迫を受けるような病態に適しており,神経圧迫を直接取り除いて罹患椎間を固定することで症状改善が得られる.本邦では,頸椎変性疾患に対して椎弓形成術を中心とした後方の手術が主に行われているが,欧米ではACDFがより多く行われている16).また,椎間板だけでなく,椎体を亜全摘(corpectomy)して除圧固定を行うanterior cervical corpectomy and fusion(ACCF)や4),必要な高位だけ椎体亜全摘を行い,ACDFと組み合わせて長範囲の除圧固定を行うhybrid法も報告されている1).近年では,これらの手術手技の改良に加えて,前方プレートや椎体間ケージ,移植材料の開発が進み,前方固定術はさらなる発展を遂げている.
頸椎前方固定術は,頸椎変性疾患に対して安定した症状改善をもたらす一方で,ほかの脊椎固定術と同様に隣接椎間障害の問題を有する.固定術の性質上,椎間本来の可動性をなくすことに加え,隣接椎間の負荷を増大させる.Eckら11)による生体力学的研究では,C5/6のプレート固定を行うと,C4/5で73.2%,C6/7で45.3%の椎間板圧が増加し,可動性も増大することを報告している.ほかの報告においても同様に,頸椎固定術後の隣接椎間では椎間板の圧,可動性が増加することが報告されている7,24,31).これらの報告から,頸椎に固定術を行うことにより隣接椎での負荷が増加し,変性の進行が惹起される機序が考えられている.
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