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腰痛治療の手術成績向上への取り組みは,私のライフワークのひとつです.Failed back surgery syndromeは,術前の症状が不変,または悪化している状態,もしくは,術前より軽快しているが,日常生活の支障が残存している状態を意味します.以前から他施設の治療に関する不満足症例の受診が多いことに私は関心をもっていました.手術不成功という認識でしたが,果たしてそうであろうかという疑問が常に頭をもたげていました.なぜなら,今の時代において,そうそう手術に失敗することはないからです.また,自験例に関しても同じ思いを有していました.自分では完璧な手術をしたと思っていても,術後に患者さんの症状がすっきり取れない症例や,まったく症状が残ってしまう症例が,ある一定の割合で存在したからです.そこで思いついたのが,われわれが手術をすべき部位でありながら見逃してしまっている病変,従来の画像診断法では隠されている病変が存在しているのでないかという仮説です.そして,この問題の解決の試みとして,画像診断困難症例の診断精度向上のために3次元画像モダリティーを臨床応用した結果,椎間孔や椎間孔外という,われわれが通常手術を実施してきた脊柱管の外の領域でも比較的高率に神経圧迫が生じているという事実を解明することができました.この新知見を解明してから,私の腰痛治療の手術成績は格段に向上しました.現在,私は腰痛手術の治療成績のよりいっそうの向上のために,国内外において本疾患の啓発に努めております.
その活動の中で,是非とも実現したいと思っているのが,医学部で用いる教科書や臨床医が参照する診療ガイドラインに腰椎椎間孔狭窄症の章を追記することです.なぜなら,きちんとした医学教育を受けずに育った医者は,やぶ医者になってしまうリスクを有しているからです.やぶ医者の語源については,ことわざの「藪をつついて蛇を出す」,すなわち,余計なことをして,かえって事態を悪化させてしまうからとする説があるようです(Wikipediaより引用).以下に,実臨床でやぶ医者が腰椎椎間孔狭窄症を患っている患者さんを診ることによって,治らないばかりか,かえって新たな病気をつくってしまっている事例,どのような悲劇が生まれているのかを紹介したいと思います.
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