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心臓手術・脳手術と同様に,脊椎手術においても低侵襲手術の流れが止まらない.それどころか,黄河やガンジス河のごとき大きな流れとなりつつある.顕微鏡手術から始まった低侵襲除圧の歴史は長いが,工学系機器の進歩によって生まれたMEDから加速がついて,新しい機器・手技が次々と生まれるようになった.低侵襲除圧に続いて,最小侵襲脊椎安定術(minimally invasive spine stabilization:MISt〔ミスト〕)という概念が生まれた.MIStは脊椎手術の一目標である脊椎固定に拘泥しない革新的な概念で,教科書を1ページ目から書き換える可能性をもっている.この背景には,脊椎以外は健康という理想的な脊椎疾患患者がいなくなり,内科的並存疾患やがん闘病中,超高齢者といった患者ばかりになったために,医療への要請が手術ファーストから患者ファーストに変わったことがある.
筆者はMIStの中では経皮的椎弓根スクリュー(percutaneous pedicle screw:PPS)が最も重要な手技と考えている.この数十年間に培った手技やリスク回避のノウハウの蓄積,椎間板生検からkyphoplastyに至る経験によって,導入初期から比較的安全性の高い手技となり欠かせない術式となっている.PPSの次に重要な手技が側方経路椎体間固定術(LIF)である.今回の日本MISt研究会監修による『MISt手技における側方経路椎体間固定術(LIF)入門』は,日本のMISt界を牽引する4人のエキスパートの編集の下,脂の乗った若手からベテランにより執筆されたものである.総論に始まり,OLIF/XLIFの相違や使い分け,手術手技のさまざまな工夫が示され,変性疾患から腫瘍や骨折などへの使用,ACRやX-core,さらにOLIF51など,これまでの限界を破ろうというデバイスの紹介もされている.
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