特集 歯突起後方偽腫瘍
特集にあたって
高安 正和
1
1愛知医科大学脳神経外科
pp.869
発行日 2018年10月25日
Published Date 2018/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002200971
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歯突起後方偽腫瘍(retro-odontoid pseudotumor)の概念は,1986年Szeらの3例の報告に端を発する.これらの症例では,関節リウマチや透析など特定の原因をもたず,慢性的な不安定性によるメカニカルストレスが偽腫瘍発生の原因と推測された.全例に椎弓切除と病変の部分切除が行われ,組織学的には線維性肉芽組織が確認されている.また,診断においてMRIの有用性が強調された.その後,MRIの普及に伴い,このような症例が国内外より数多く報告されるようになった.成因や治療法に関してはさまざまな説が提唱されており,X線の機能撮影において明らかな不安定性を認めない例も存在する.ただし,固定後に病変が縮小することは共通の認識となっている.そこで,治療法に関しては固定術が主となるが,固定範囲に関しては後頭頸椎固定を推奨するものと環軸椎固定のみでよいとするものがある.しかし固定後,病変の縮小までに時間を要することから,脊髄症状が高度の場合は除圧が必要となる.除圧に関しては,環椎後弓切除のみの間接除圧から偽腫瘍の直接切除まで幅がある.また,偽腫瘍の患者は高齢者に多いため,より低侵襲な治療が望まれ,固定を行わず環椎後弓切除のみで済まされることもある.
本特集では,関節リウマチも含め歯突起後方の非腫瘍性の腫瘤性病変について広く専門家に執筆をお願いした.特に,さまざまな手術法については具体的に記載いただいた.歯突起後方偽腫瘍は本誌において初めての特集となるので,少しでも多くの読者に目を通していたければ幸いである.
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