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低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)については,2000年代初頭に外傷性頸部症候群との関連が指摘されたためマスコミに大きく取り上げられ社会の注目を浴びた.このような背景において,当時,混乱していた本疾患の概念の理解を深める目的をもって,本誌の編集委員であった阿部俊昭先生が2006年に第1回の特集を企画されました.その後,2009年にPart 2,2012年にPart 3の特集も組まれ,いずれも読者から高い関心が得られました.一方,患者団体や地方自治体からの要望もあって国も積極的に取り組む姿勢を示すようになり,2007年度には日本脳神経外科学会を中心に関連学会の協力を得て,厚生労働科学研究費補助金事業「脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する研究(研究代表者:嘉山孝正 山形大学医学部教授)」が開始されました.私自身も日本脊髄外科学会の代表として本研究事業に参加する機会を得ました.この研究班では,はじめに混乱していた疾患概念を明確化し共通の土俵で議論するために画像上髄液漏出の明らかな脳脊髄液漏出症に絞っての検討が行われ,診断基準が策定されました.続いて,脳脊髄液漏出症と診断された症例に対し先進医療として脊髄硬膜外自己血注入法(ブラッドパッチ治療)の承認を受け,その有効性を検証し,ついに2016年4月より保険適応を取得することができました.本特集では,研究班に参加された先生方から,その成果をご報告いただくとともに,脳脊髄液減少症が疑われるものの髄液漏出が確定できない境界例や小児例など,今後の課題についてもご執筆していただくことができました.読者の皆様には,脳脊髄液漏出症,脳脊髄液減少症の最新の知見を整理するよい機会となるものと確信しております.
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