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Parkinson病の姿勢異常の病態
Parkinson病(PD)の発症年齢は50〜65歳に多く,社会の高齢化に伴い患者数が増加している17).厚生労働省の指定難病患者数は潰瘍性大腸炎に次いで第2位となっており,PD患者の脊椎疾患への対応は脊椎外科医にとっても大きな課題と考えられる.その病態についていまだ不明な点も多いことが問題であるが,PDの脊椎疾患の病態を理解して治療選択を行う必要がある.
PDの特徴的な姿勢障害として,前傾姿勢,腰曲がり(camptocormia),首下がり(dropped head),Pisa症候群などがある.これらの原因としては,頸部〜背部の伸筋群の筋力低下に加えて屈筋群のジストニア(持続的な筋緊張による,捻転性または反復性の運動や異常姿勢)が原因と考えられている.脊椎疾患で最も問題となる腰曲がりであるが,その定義は,立位や歩行時において胸腰椎の前屈が45度以上となるが,臥位になると消失する姿勢異常とされている17).国立精神・神経医療研究センターによる分類では,股関節で前屈する腰部前屈型と,下位胸椎〜上位腰椎部で前屈する上腹部前屈型に分類され,前者は大腰筋,後者は外腹斜筋が原因筋とされている4).われわれの非PD患者とのアライメント比較においても,PD患者は腰椎前弯減少に対する胸椎後弯の減少や骨盤の後傾化といった代償機構が十分機能しないまま体幹の前傾姿勢が認められる.すなわち,骨盤を含めた体幹全体で前傾化が起こりやすく,PDの重症度が進行するとその傾向が顕著であった21).また近年では,この姿勢異常の原因は,固有感覚障害を背景に発生する2次性のミオパシーとも考えられており,傍脊柱筋の筋病理でも非特異的所見の域を出ないもののtype 1線維の増加,type 2線維の減少,NADHやチトクローム染色での筋線維中央部における染色性の低下などが報告されており,今後ミトコンドリア機能異常などとの関連も注目されている6).しかし,固有感覚障害については,中枢性の筋緊張調節障害(基底核病変)があるとしても,なぜ特定部位に筋病変が生じるかなど不明な点も多い14).また,伸筋群の筋力低下と屈筋群のジストニアが頸部に発生すると首下がりを呈する.腰曲がりの発生率は4〜10%であり16,17),長期経過例や重症例で頻度が高いのに対し,首下がりの発生頻度は多系統萎縮症などに比べるとPDでは少ない.これら姿勢異常の治療としては,L-DOPAの増量については無効な場合が多く,薬剤性の場合は原因薬剤の減量・中止,ドパミンアゴニスト投与での有効例もある.また,脳深部刺激療法(deep brain stimulation:DBS)は比較的有効とされている15).
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