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特集 脊椎脊髄手術の安全性を高める予防と対策
第2章 各論
4.各種疾患,治療法について
脊椎外傷(交通事故,労働災害)の問題点とその対策
Risk Management of the Spinal Injury(Traffic Accident and Industrial Accident)
関根 拓未
1
,
佐藤 勝彦
1
Takumi SEKINE
1
,
Katsuhiko SATO
1
1大原綜合病院整形外科
1Department of Orthopaedic Surgery, Ohara General Hospital
キーワード:
脊椎外傷
,
spinal injury
,
交通事故
,
traffic accident
,
労働災害
,
industrial accident
Keyword:
脊椎外傷
,
spinal injury
,
交通事故
,
traffic accident
,
労働災害
,
industrial accident
pp.419-424
発行日 2018年4月25日
Published Date 2018/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002200861
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はじめに
リスクマネジメントとは,起こり得る危機をすべて知り,その防止策を講じておくことである.一般的に,ハイリスクとされる脊椎外傷の診療においては,治療者はリスク回避の対処法を身につけておく必要がある.特に,交通事故や労働災害による脊椎外傷では,加害者側や雇用者側が被害者や被災者の診療を担保し,最終的には被った障害に対する補償がなされる損害保険診療であるため,完治を求めるあまり治療期間の長期化や後遺障害などへの不納得で,被害者と加害者間でのトラブルに治療者側が巻き込まれることも少なくない.そのため,通常の疾病に対する保険診療以上にリスクマネジメントが必要である.
たとえば交通事故の場合,加害者サイドや損害保険会社が「過失相殺」や「求償権」を理由に,医療側を提訴する場合がある.すなわち,交通事故の診療で医療事故が起こった場合,被害者の被った被害の何割かは医療サイドに責任があるとする「過失相殺」という判断で,加害者サイドや損害保険会社から後遺症補償の何割かを医療サイドに求めてくる場合がある9).また,治療期間が長引き多額の医療費がかかってしまったとき,その理由が最初の怪我のためだけでなく,医療行為が不適切であったと思われる場合,加害者または加害者側の損害保険会社が最終損害に対して不当に多額の支払いをしなければならなかったのは医療側にも責任があると,「求償権」を理由に事故による損害額との差を求めてくる場合がある9).
本稿では,交通事故や労働災害による脊椎外傷の患者への対処法について,リスクマネジメントの観点から記載する.
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