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なぜ,術前に心理的評価が必要なのか?
手術療法にかかわらず,何らかの治療は,何かを改善することを目的に行われる.何かを改善すること,すなわち,治療の結果または成果が,アウトカム(outcome)である.アウトカムには,さまざまな指標がある.たとえば,悪性腫瘍を対象とすれば生命予後が重要なアウトカムとなる.一般に,生命予後がよい治療法は,優れた治療法と考えることができる.一方,脊椎変性疾患においては,アウトカムはさまざまである.たとえば,筋力や連続歩行距離,あるいは手指巧緻障害といった機能から,痛みやしびれの程度,あるいは治療や回復具合全体を包含した治療に対する満足度といった,客観的な評価にはなりにくい個人の主観的判断まで,多種多様である.機能には器質的異常が関係し,痛みやしびれの程度にも器質的異常が関係していると考えられる.しかし,痛みやしびれの程度や満足度は,個人の主観的な判断であるがゆえに,心理社会的因子や精神医学的問題といった非器質的な要素が関与する可能性がある(図1)37).
1951年にHanvikらがMinnesota Multiphasic Personality Inventory(MMPI)を腰痛患者に導入して以来,心理的評価と脊椎疾患との関係について多数の報告がある11,39,53,57).術前の心理的評価は術後のアウトカムを予測するという報告もあれば,術前後で心理的評価の結果が変わることから,アウトカム予測に有用ではないという報告もある13,14,16,38,46).一方,腰椎多数回手術例においては,心理的評価で異常を示す頻度が高いとされている15,57).したがって,現時点では,術前の心理的評価が,即手術適応の可否となるわけではない.
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