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はじめに
頸椎症性脊髄症には種々の特殊病型が存在するが,通常の定型的な例では,手指の異常感覚(ビリビリ感,ジンジン感などの自覚的異常感覚)で発症することがほとんどであり,手指の感覚障害は本症の初期の主要症候である.また,その感覚障害の分布は責任病巣のレベル診断の指標11,22,33)(図1)としても重要となる.頸髄圧迫がさらに進行すると,手指の巧緻運動障害と下肢痙性による歩行障害が加わり,障害側優位の足部の異常感覚が出現し上行していくというパターンが多い.図2に頸椎症性脊髄症の代表例の感覚障害分布を示す.頸椎症性脊髄症の病態と症候との関連については,従来から服部ら10)の分類がよく知られている.すなわち,頸髄の圧迫ではまず中心部の灰白質が障害され,髄節症候として手指の感覚障害や髄節支配筋の筋力低下・腱反射低下を呈し(服部Ⅰ型),次いで病変が側索に拡大して下肢の痙性による歩行障害が加わり(服部Ⅱ型),さらに前側索の脊髄視床路まで病変が及び,下肢および体幹の感覚障害が出現する(服部Ⅲ型)というもので,脊髄横断面における病変の拡大に対応した症候の進展様式が想定されてきた.
本症における手指の異常感覚が,脊髄後角病変に起因する髄節症候(segmental sign)とする従来の考え方に対して,筆者は日常臨床での観察から疑問を感じてきた.結論からいうと,圧迫性頸髄症の手指の異常感覚は,主に後索の楔状束の障害に起因するlong tract signと捉えることが合理的ではないかと考えるに至った.その根拠についての詳細はすでに紹介した15)が,本稿では再度,脊髄の解剖と圧迫病理・病態との関連を補足して論じる.そして,脊髄の感覚症候学の新しい考え方を提唱したい.
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