脊髄円錐上部症候群，脊髄円錐部症候群

Epiconus Syndrome and Conus Medullaris Syndrome

はじめに

　下肢の弛緩性運動麻痺，感覚障害，排尿排便障害を引き起こす病変としては，腰椎椎間板ヘルニアや変形性腰椎症による馬尾障害，神経根障害が最も多い．しかし，胸腰椎移行部レベルの円錐部（S3髄節以下），円錐上部（L4〜S2髄節）の病変によって腰椎病変と類似した症候を呈する場合がある^2,3,6,15）．これは，脊椎と脊髄の高位のズレによって起きるものであり，必ずしも「偽性局在症候」とはいえないが，しばしば臨床診断上の落とし穴となる．

　本稿では，臨床現場で見逃されやすい症例を提示し，次いで脊髄下端部の解剖，脊髄円錐上部症候群，脊髄円錐症候群を概説する．また，馬尾症候群やほかの部位の病変との鑑別についても述べる．