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脊髄円錐と円錐上部はMRIでは一応同定できるが,脊椎高位と脊髄髄節の位置関係は人により差があることに要注意である1).それよりもさらに,これらの部位に障害をきたす病変も外科的と内科的,そして髄内と髄外(外側からの圧迫)があり,髄内でも梗塞/出血や炎症性/免疫性疾患,腫瘍など,髄外でも脊椎疾患や腫瘍などがあり,それぞれで病態や症候が異なることが予想される.さらに,病変が上下/水平方向にどれほどの拡がりをもつか,馬尾への影響が大きいか小さいか10)でも当然,症候は違ってくる.したがって,「円錐症候群」とか「円錐上部症候群」といってもきれいにそこに限局する症例はまれであり,特別な診断基準があるわけでもない.よって,これらを表題として報告されている論文における症候群の定義や内容はかなり異なっている.だからといって,もちろん,鑑別作業を放棄してよいわけではない.MRI画像がすべてを教えてくれるとは限らないし,何が中核的症候の組み合わせであり,どこがその責任部位であり,その病理は何と考えられるかを注意深く分析しないと,治療に結びつく診断をすることができない.
2つの症候群を知るにあたって有用な論文はいくつかある1,8,11,12)が,詳しすぎても思考が進まないので,本論ではまず岩﨑7)と小田・德橋11)の簡潔・明解な記載から紹介する.解剖学的にみると,脊髄円錐(conus medullaris)はS3以下の髄節であり,およそL1高位に存在する.この部には下肢筋を支配する髄節は含まれないので,円錐周囲にあるL2以下の神経根障害を伴わない限り運動障害は出現しない.感覚障害は肛門周囲にサドル状に認められる.腱反射ではアキレス腱反射(ATR)が低下することが多い.排尿中枢の直接的障害のために高度の核下性排尿障害を特徴的に呈する.痛みはあまりきたさないが,馬尾の圧迫のために肛門周囲から大腿後面に対称性の疼痛を訴えることがある7).なお,L1-5神経根とS1-2前根が周囲に存在するが,円錐上部に比して可動性が大きいために圧迫性病変による障害は比較的免れる11).一方,円錐上部(epiconus)はL4-S2髄節を含んでおり,およそT12高位に存在する.この部の障害では下腿以下の筋力低下(下垂足)や慢性例では筋萎縮が生じるが,L4髄節の関与が少ない腸腰筋や大腿四頭筋の筋力は比較的保たれる.感覚障害は主にL5〜S1皮節に軽度に現れる.腱反射は膝蓋腱反射(PTR)でやや低下することが多いが,ATRは髄節高位と神経根障害により一定しない.病変が円錐上部に限局していれば排尿障害は前面に出ない.馬尾の圧迫がなければ下肢痛は伴わない7).脊髄圧排が外側に偏位していない限りT12-L1神経根は障害されず,L2-5神経根のほうが障害されやすく,髄節と神経根の重複障害があるため,L4-5神経支配領域に顕著に現れやすい11).
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