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はじめに
二分脊椎症,特にspinal dysraphismによる下部尿路機能障害患者の尿路管理の主目的は,全年齢層を通じて,上部尿路(腎機能)の保持および尿路感染症の防止であるが,5歳以上では,尿失禁の改善を併せて考慮して治療にあたる必要がある.10歳以上では,社会的にその必要性がさらに増す.したがって,ライフステージに合わせてこれらの目標が達成できるように適切な尿路管理法を実践する必要がある.清潔間欠導尿法(clean intermittent catheterization:CIC)は1972年にLapidesら29)によって提唱されたが,その普及に伴って神経因性下部尿路機能障害の尿路管理成績は飛躍的に向上した2〜4,11,22〜24,26,35,50).さらに,尿流動態検査(urodynamic study:UDS)の積極的な導入によって上部尿路障害の危険因子が明らかになるにつれて,危険因子を有する二分脊椎患児においては,たとえその時点で上部尿路が正常であっても,無治療のまま経過観察すると将来高率に上部尿路障害が発生することが予想されるため,上部尿路障害の回避を目的とした早期からの予防的CICの導入が推奨されるようになった3,5,7,13,14,18,23〜25,40,50).したがって,今日これらの治療目標達成のためには,「下部尿路機能障害の早期診断とそれに基づく適切な尿路管理の早期導入」が重要と考えられている.特に,脊髄髄膜瘤患児はその大半が下部尿路機能障害を合併するため,その早期診断とそれに基づく尿路管理の早期導入がとりわけ大切である.
このような下部尿路機能障害の早期診断とそれに基づく適切な尿路管理の早期導入の重要性が幅広く認識され,標準的に臨床の現場で実践されることを目的として,日本排尿機能学会は,2005年8月に,「二分脊椎症に伴う下部尿路機能障害の診療ガイドライン」を出版した20).同ガイドラインは,ライフステージ別に,① 新生児・乳児・5歳未満の幼児期,② 幼児・学童期前半(5〜10歳),③ 学童期後半・思春期以降(10歳以上)の3期に分けて,二分脊椎症患者の下部尿路機能障害に関する標準的な診断・治療法の指針を示している.ここでは,同ガイドラインに沿って,各ライフステージにおける尿路管理の基本的な考え方を概説する.併せて,ラテックス・アレルギーならびに排便管理についても触れる.
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