特集 疾患別 バランス障害に対する作業療法
コラム:統合失調症にみられるバランス能力の特徴
萩原 賢二
1
1土佐リハビリテーションカレッジ
pp.423-424
発行日 2022年5月15日
Published Date 2022/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202961
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統合失調症患者の動きの特徴を病態概念から考えると,身体機能,認知機能,環境因子を適度に統合し,目的ある運動として表出することが困難な状態である.これらは,寝ている姿勢,座位・立位姿勢,立ち上がりや歩行,コミュニケーション等,さまざまな機能的な動きを伴う生活や人とのかかわりに影響を及ぼす.
姿勢を安定させるためには,身体中心軸や重心,支持基底面といった要素があり,中でも重心を意識することがバランス保持では特に重要である.皆さんは,卵を机の上にそっと置いて立たせたことがあるだろうか.実は,机に立たせることができるのは生卵なのだが,ここに統合失調症患者の特徴的な動きのヒントが隠されているように思う.卵を形づくっている殻の中では,流動的な黄身が下方に移動することで重心をコントロールし,立つという安定感をもたらせている.反対にゆで卵では,中身が固まることで卵の向きの変化に対して重心位置を変えることができず,何度トライしてもうまく立たせることができない.統合失調症患者の日々の行動からみえてくるぎこちない動きやなめらかさの欠如は,身体を形づくっている内部の硬さが原因かもしれない.そもそも,自身の身体の動きについて,どれだけ意識できているだろうか.
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