増刊号 精神科作業療法
第4章 精神科作業療法のフィールド
14 今あるものを壊さずに,新たな価値観や最適性を生み出すこと—暮らしと環境から始まる地域づくり・対話と作業による社会文化への介入
宮崎 宏興
1,2
Hirooki Miyazaki
1,2
1NPO法人いねいぶる
2T-SIP(Tatsuno-social inclusion project)
2T-SIP(Tatsuno-social inclusion project)
pp.930-936
発行日 2020年7月20日
Published Date 2020/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202204
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地域社会を「再編集(Re-edit)」する
地域社会は生きている.筆者は常日ごろからそう感じている.多様な人や暮らしのある地域社会において,ある人の想いから始まったことから,多数の市民が主体的変化を起こしはじめると,ある人の暮らしと価値観が少しだけ変わる.その少しの暮らしの変化を経験した人は,他の人の少しの想いに寄り添うことができるようになり,それが多数の市民の力を駆り立てる原動力となって,別の誰かの暮らしを少し変える力になる.その繰り返しが,多くの価値観や暮らしに影響を与え,その地域で文化として根づいていく.
また,サステナブル社会の実現に向けた,エシカルでユニバーサルな地域デザインは,多様な住民や地域コミュニティが,自らが抱く「こうあってほしい」という希望に基づき,有機的なつながりを求め,人や物が動き流れる.そこから,新しい価値観や知識が生まれ,人や社会が育つ.地域は,これらの循環を起こし続けている.今ある暮らしや地域社会を壊さずに,新たな価値観や最適性を生み出す.既存の作業を「再編集(Re-edit)」する視点がそこにある.
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