増刊号 精神科作業療法
第4章 精神科作業療法のフィールド
15 地域移行・定着—ピアサポーターと一緒に
遠藤 真史
1
Masashi Endo
1
1NPO法人那須フロンティア 地域生活支援センターゆずり葉
pp.937-942
発行日 2020年7月20日
Published Date 2020/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202205
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はじめに
障害者総合支援法の「地域移行支援・地域定着支援」という障害福祉サービスの存在は,入院患者にはどのくらい伝わっているのだろう.また,障害福祉サービス事業所・精神科病院・行政等で支援にかかわるスタッフは,そのサービスを入院患者にどのように伝えているだろうか.入院患者自身はどのように受け止め,入院患者自身はそのサービスの対象になっていると実感はあるのだろうか? 入院患者には「退院促進・退院支援」の表現のほうがわかりやすく,なじみもあると思うが,勘違いしてほしくないのは,「このサービスを使わないと,退院できない」ということではないし,このサービスを利用しなくとも退院する人も多くいるということである.このことはお伝えしておきたい.
実際に入院患者に退院のことを聞いてみると,「住み慣れた家の生活に戻りたい」,「20年も入院したKさんが退院したので自分も退院したい」,「戻る家がないけれど,退院できるの?」,「グループホームってどんなところ?」,「一生,精神科病院に入院していたい」,「家族に反対されて,退院は難しい」と,おのおのの思いを吐露してくれる.それらの言葉は,同じような経験をしているピアサポーターによって導き出されることも多い.ピアサポーターは,支援過程でわれわれ支援者の協働者でもある.
本稿では退院意欲の有無や入院年数の長さにかかわらず,すべての入院患者が「地域移行支援・地域定着支援」の対象者であることを前提とし,医療と福祉が協働で取り組む体制整備やピアサポーターと協働した支援についてお伝えしたい.
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