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Key Questions
Q1:精神科作業療法はこれからどうなっていくか?
Q2:精神科救急での取り組みにどのような例があるか?
Q3:包括的支援マネジメントのメリットは?
はじめに
石川県立高松病院(以下,当院)は,病床数400の単科精神科病院である.41床を成人の救急病棟として,50床を重度かつ難治性病棟として,55床を回復期病棟として運用している.その他では,認知症高齢者の急性期治療病棟,認知症治療病棟,アルコール病棟等がある.
筆者は2007年度(平成19年度)に県の定例人事異動で当院に着任した.それまでは身体障害の病院に通算 6年,県庁 1年,県リハビリテーションセンターに7年,保健所に12年勤務し,精神科病院の勤務は初めてであった.
着任し,上司に挨拶をしたとき,「作業療法には何も期待していないので,とりあえず患者さんを遊ばせておいてほしい」と言われ,とてもショックを受けたことを今でも鮮明に覚えている.病棟の看護師は,OTはレクリエーションをする人という認識であった.これは一部の看護師からは現在でも根強くそのように思われている.さらに,作業療法は患者が参加を嫌がるため,積極的に参加を勧めていないとのことであった.
初年度は認知症治療病棟を担当したため,前任のOTに精神科作業療法の評価方法やプログラム等,計画について相談するも,引き継いだ「評価」は緞通織の目数を作業終了後に数えることであり,医師からはMMSEの評価が期待された.プログラムはレクリエーションが60分,手工芸60分を実施することの申し送りを受けた.また,入浴の日には,患者の髪をドライヤーで乾かすことと化粧水をつけること,靴下をはかせることがOTの担当であった.
正直,精神科作業療法は身体障害領域や保健所での業務とは異なり,何を目的に何をしているのかまったくと言っていいほどわからなかった.しかし,これまでの県職員経験から,とりあえず1年間は前任の仕事を引き継ぎ踏襲するとともに,この領域は初任者同然であったため,一人ひとりの患者と向き合い,勉強しつつ,評価と作業療法計画の作成,エビデンスに基づくプログラムづくりを試行錯誤した.その中で特に医師から期待された精神機能の評価は,精神機能の全体を網羅するものがなく,学会によってその分類や名称が異なっていることがわかった.結果としてWHOが定める国際生活機能分類(ICF)を用いて,対象者を把握することとした.
このようにして始まった筆者の精神科でのこれまでの取り組みを紹介したい.
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