卷頭言
鯨に学ぶ
小川 鼎三
1
1東京大学
pp.275
発行日 1955年5月15日
Published Date 1955/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200232
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鯨という海の巨大獣を研究しているなどと云うと,鯨をみたことのある人もない人もそれを聞いて,みな多少ともコツケイ味を感ずるらしいのである。きつとそれは鯨の図体がばかげて大きなもので,陸の巨大獣である象の30倍も目方があること等を考えておかしくなるのであろう。じつさい地質時代を通じてみても,この地球上で最大の動物はシロナガス鯨である。
こういう途方もなく大きい動物を解剖学の対象にえらぶなどいうのは馬鹿げているとも云える。心臟をしらべるにしてもちよつと裏返しするために他人の助けまでかりなければならない。しかし又,一長一短で都合のよいこともある。心臟にゆく神経の太さがエンピツほどもある。それが枝分れしたあげくは虫メガネでもみえなくなるが,何しろ肉眼でたどられる範囲がずつと広いことは有利である。
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